ミュージカル『エリザベート』でおなじみのハプスブルク家の皇后、エリザベート。
華やかなドレス姿や「死」とのロマンティックな関係性が描かれる一方で、実際のエリザベートはどんな人生を歩んだのでしょうか?
この記事では、史実に基づいたエリザベートの生涯と、彼女を取り巻く家族との「絆とすれ違い」に焦点を当ててまとめました。
宮廷のしきたりに縛られながらも、自由を求めて葛藤し続けたエリザベートのリアルな姿を、少しだけのぞいてみましょう。

自由を求めた孤独な皇后、エリザベート。
大人気ミュージカルの題材にもなっていますが、実際はどのような人物だったのでしょうか?
エリザベート皇后の生涯をざっくり解説

ミュージカル『エリザベート』では自由を求めて葛藤する様子が強く描かれていますが、実際のエリザベート皇后はどのような人物だったのでしょうか。
その生涯について、史実に基づいて分かりやすくざっくりまとめてみました。
幼少期|自由な空気の中で育つ
1837年12月24日、バイエルン王国の名門ヴィッテルスバッハ家に生まれたエリザベート(愛称シシィ)。
裕福な貴族の家ではありましたが当初王位継承権はなく、のびのびとした環境で育ったシシィ。
父・マクシミリアン公の自由奔放な教育方針のもと、自然に親しみ、乗馬や詩作を好む少女時代を送りました。
厳格な宮廷とは無縁の伸びやかな環境で育ったことが、彼女の後の「自由への強い憧れ」に大きな影響を与えたと考えられています。
フランツ・ヨーゼフとの結婚|姉ではなく妹が選ばれた運命
本来、姉のヘレネがお見合い相手だったはずが、フランツ・ヨーゼフ皇帝はたまたま姉に付き添っていたエリザベートに一目惚れ。
わずか16歳だったエリザベートは戸惑いながらも、運命に押し流される形でオーストリア皇后となります。
この時から、彼女の「自由」と「義務」との闘いが始まりました。
宮廷生活での葛藤|束縛と孤独
オーストリア宮廷は極めて厳格な世界。
自分の意志を抑え、皇后としての役割を全うすることが求められました。
しかし幼少期から自由に生きてきたエリザベートにとって、それは窒息するような苦しみ。
さらに姑ゾフィーとの価値観の違いや、子どもたちを自分の手元で育てられなかったことが、彼女を孤独へと追い込みます。
この辺りの状況はミュージカル『エリザベート』でも描かれていて、史実に沿っています。
長男のルドルフが拳銃で命を絶ったことから、重度の鬱状態になってしまったエリザベート。
ルドルフの死後、彼女は最期まで喪服を脱ぐことはありませんでした。
次第にエリザベートは宮廷生活を避けるようになり、国外への長期旅行を繰り返すようになりました。
晩年と暗殺|最後まで「自由」を求め続けた
年齢を重ねてもなお、エリザベートは徹底的な美容と健康管理を怠らず、若さと美貌に執着しました。
しかし心の奥には、抑えきれない孤独と絶望が常にあったと言われています。
1898年、ジュネーヴ滞在中に無政府主義者の男、ルイジ・ルケーニに襲撃され、命を落としました。
享年60歳。
最後まで「自由」を求めた生涯の幕切れでした。
姑ゾフィーとの関係|対立と、最後の和解

姑であるゾフィー大公妃は、厳格で伝統を重んじる人物でした。
エリザベートとは育った環境も価値観も正反対であり、ことあるごとに意見が対立していました。
特に子どもたちの養育方針を巡っては大きな摩擦が生じ、ゾフィーは孫たちを自分の手元で育てたいと切望。
エリザベートは「自分の子どもを奪われた」と感じていたと言われています。
ただ、ゾフィーも決してエリザベートを憎んでいたわけではなく、むしろ皇后としての重圧を案じ支えようとした面もありました。
晩年、ゾフィーが病に倒れた際はエリザベートが献身的に看病し、ゾフィーの最期を看取ったのはエリザベートだと言われています。
二人の間にはわずかながら和解の兆しがあったと願いたいですね。
姉ヘレネとの関係|運命を変えた姉妹

フランツ・ヨーゼフ皇帝の本来のお見合い相手は、姉のヘレネでした。
しかし妹のエリザベートが選ばれたことで、姉妹の関係は一時的にぎくしゃくしたとも言われています。
エリザベート自身も突然の結婚話に戸惑いを感じ、姉ヘレネに対する負い目や申し訳なさを抱えていたことでしょう。
それでもヘレネはエリザベートを恨むことなく、別の名家に嫁ぎ穏やかな人生を送りました。
2人は手紙のやりとりを続け、宮廷生活の息苦しさに愚痴をこぼすエリザベートを励ましていたヘレネ。
晩年は時折エリザベートを見舞ったりと、遠く離れていてもヘレネとの絆は消えることはありませんでした。
ひと悶着あったものの二人の関係は断絶することはなく、その後も長く穏やかに繋がり続けたとされています。
エリザベートは「自由」と「義務」の間で揺れ続けた皇后!史実から分かる本当のエリザベートは?
自由を愛しながらも、皇后という立場に縛られ続けたエリザベート皇后。
彼女の史実の人生は、愛と義務、家族との絆とすれ違い、そして孤独な戦いに満ちていました。
ミュージカル『エリザベート』ではドラマティックに描かれていますが、史実を知ることでその背景にあるリアルな葛藤や苦悩がより深く理解できます。
華やかなドレスや美貌の裏にあった「本当のエリザベート皇后」。
その強さと繊細さを知ることで、作品への解像度もきっと高まるはずです。
さらにエリザベート皇后の意外な素顔を知りたい方はこちら。
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